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Oracle社を知る - Part 2

SoftwareOne blog editorial team
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Part1でご紹介した通り、多くのソフトウェアメーカーは、自身の製品の知的財産権を守りながら確実に収益を上げるために、ありとあらゆる手法で不正な利用を未然に防ぐ努力をしています。

ところがOracle社は、他のソフトウェアメーカーが積極的に採用しているこのような防止手段を施さず、それでいながら確実なビジネスを展開しています。果たして、それはどのような方法なのでしょうか?

Oracleのビジネスモデルの原点

Oracle社には自社で運営するウェブサイト“Oracle Technology Network”(https://www.oracle.com/jp/technical-resources/)というものがあります。

これは文字通り、Oracle社の技術に関するネットワーク(コミュニティ)です。ですのでOracle社に興味のある方なら誰でも自由に参加することができますし、もちろん無料です。

このコミュニティは、Oracle社の製品を多くの個人・法人に知ってもらうために用意されたもので、技術を学ぶ場としての面と、あわせプリセールス的側面があります。このサイトではOracle社の最新の製品の技術的紹介だけではなく、実際に製品化されたソフトウェアをダウンロードできる仕組みも用意されています。「製品に触れてみたい、検証してみたい」というユーザは、ユーザ登録さえすればいつでも好きな時に、好きな製品をダウンロードし、トライアルとして使用することができます。これは他のソフトウェアメーカーでも同じかと思います。

“トライアル”は文字通りあくまで“試し”です。”試し“は、それがどのようなものか、自分の求めているニーズにマッチしているかを検証する手段ですので、その”試し“が半永久的に続くということは常識的にあり得ませんし、さすがにメーカー側もそのような行為は認めません。ですので通常、“トライアル”は、その使用できる期間をある程度制限しています。1週間から長くても1ケ月くらいが一般的ではないでしょうか。ソフトウェアをダウンロードし、インストール後、その期間の満了が近づくとアラートが表示され、期間が終了するとそのソフトウェアは使用できなくなるというのが一般的なソフトウェア業界における、”トライアル“で製品を使用させるための仕組みでしょう。

ところがOracle社は、ある点でこれとは異なります。

Oracle社は、前述のOracle Technology Networkでユーザ登録をして、製品をダウンロード、インストールして使用しても、その使用期間には縛りがありません。半永久的に使用することができます。しかも原則、機能的な制限もありませんし、正式な製品版としてリリースされているものと同じものを使用することができます。もちろんある日、突然、課金されたり、製品にロックがかかったり、何か警告が出たりすることもありません。ましてや今流行りの広告モデル(広告が表示される)でもありません。

「正式版と同じものなら、誰もがそのまま無償で使い続けるのでは?」と不思議に思うことでしょう。

このOTNがある以上、収益化はできないのでは?と考えてしまいますが、Oracle社どのようにしてビジネスを成立させているのでしょうか?

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すべては契約によって縛られる

OTNから製品をダウンロードする場合、ユーザはOracle Technology Network License Agreementという使用許諾契約への同意を求められます。ここにはどのような目的でそのソフトウェアを使用できるかが定義されています。

実際には

  • アプリケーションの開発
  • テスト
  • プロトタイプ作成
  • デモンストレーション

でのみ使用できることが明記されています。

Oracle社がOTNからダウンロードするユーザに課している行為は、この使用許諾契約への同意(実際にはAcceptボタンをクリックするだけ)のみです。多くの方は「同意するだけ?」と思うでしょう。何故なら本番での使用など、ここに書かれていない使い方がいくらでもできてしまうからです。しかしOracle社からするとこれで十分なのです。その理由はOracle社のビジネスの原点に由来しています。

Oracle社のファーストユーザはライトパターソン空軍基地であったことは有名な話です。

国家の機関とのビジネスですので、さぞかし契約に至るまでには並々ならぬ苦労があったことでしょう。

しかしそれが功を奏してか、Oracle社はこの取引を契機に、民間法人や公的機関を中心にビジネスを大きく展開していきます。

取引相手はコンシューマ(一般消費者)ではなく、明確に法人や公的機関ですので、すべての取引は「契約」がベースです。

契約書を取り交わすことで、そこに記載された権利、義務、その他の記載事項への遵守が両当事者に課せられます。

一方で、民間法人や公的機関であるユーザ(個人でも同じ)が自身の業務を遂行するためには、社会的信用を維持することは絶対に必要不可欠な要件です。世の中で”コンプライアンス“、”ガバナンス“というワードが、毎日の様に耳にする今日では、この社会的信用の欠落は命取りになります。

したがってOracle社は、

  1. ユーザとは使用条件が定義された契約を交わす(OTNではAcceptボタンを押す)
  2. ユーザは自身の業務を継続するために社会的信用を維持することが必要不可欠であり、従って契約違反などの行為をするはずがないし、取り交わした契約は遵守する
  3. 故に、使用に関する何らかの制限を加える仕組みを新たに付け加えることは不必要であり、契約だけですべてが担保される

という考え方がベースになったビジネスモデルを展開しています。

OTNから製品をダウンロードする場合も、上記の通りAgreementで使用できる範囲が定められており、ユーザはそれに同意した上で使用しているので問題ないという論理です。

とは言え、「それでも契約を守らないケースは出てくるのでは?」との疑念を拭い去ることができません。

Oracle社はその点をどのようにリスクヘッジしているのでしょうか?(Part 3に続く)

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A building is lit up at night.

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